レッド・ツェッペリン風サウンドをDTMで作る|Shared Room Bus+パラレルコンプで「同じ部屋」に鳴らす実践ガイド

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レッドツェッペリン風-をdtmで構築する各パート音作りテクニカルガイドのアイキャッチ画像
tetsu7017
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映画『レッド・ツェッペリン:ビカミング』が2025年秋に公開された。メンバー自身の証言、未公開ライブ映像、家族写真を紡いだこの作品は、「伝説がどこから始まったか」を静かに問いかけてくる。

その問いに対して、自分なりの答えを音で出してみた。

本記事では単なるプラグイン列挙ではなく、「全パートを同じ部屋で鳴らす」という一貫した方法論をもとに、ドラム・ベース・ギター・ボーカル各パートの設計を解説する。実例として、本記事の手法で実際に仕上げたハードロック・インスト曲「Bronze Hammer」を通底させる。

本記事の執筆スタンスについて: 各パートの設定は「AIで草案 → 実機で検証 → 実例(Bronze Hammer)で確認」のプロセスを経ている。検証していない部分(所有外プラグインの設定など)は「参考・要調整」と明示する。

この投稿の対象者
  • レッド・ツェッペリンのようなヴィンテージロックサウンドをDTMで再現したい中級者以上
  • 「各パートは良い音なのに、合わせると馴染まない」という壁にぶつかっているDTMer
  • Shared Room Bus・パラレルコンプ・中域マスキングを実践で学びたい方
この投稿を読むメリット
  • 「同じ部屋で鳴らす」概念図+実装図で、ルーティングの全体像が把握できる
  • 実制作(Bronze Hammer)で検証済みの設定・数値が具体的にわかる
  • 打ち込みから処理・マスタリングまで全工程を1記事でカバー

クリックして読める「目次」

レッド・ツェッペリンとは

Led Zeppelin
出典:Wikipedia

レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)は1968年にロンドンで結成されたイギリスのロックバンド。

メンバー:

  • ジョン・ボーナム(John Bonham):ドラム
  • ジミー・ペイジ(Jimmy Page):ギター
  • ロバート・プラント(Robert Plant):ボーカル
  • ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones):ベース/キーボード

ブルース・フォーク・民俗音楽を取り込んだ重厚なサウンドで、ハードロック/ヘヴィメタルの先駆けとされる。アルバム単位での作品性を重視し、スタジアム・ロックのスケールを確立した点でも後世に大きな影響を与えた。


【前提知識】1969〜1973年のZEPサウンド:時代の録音技術を知る

ZEPのサウンドを模倣するにあたって、まず押さえておくべきことがある。彼らが使っていた技術と、現代のDTMで「なんとなく使う」プラグインは、時代が違う。

アナログテープ主体の録音

ZEP初期(1969〜1973年)の録音は、アナログテープ(15 IPS / 30 IPS)が主役だ。テープを通ることで生まれる自然なサチュレーション・トランジェントの丸み・わずかなコンプレッションが、あの独特の「粘り」と「温かさ」を作っている。

DAWでこれを模倣するには、テープサチュレーション系プラグイン(UADx Studer A800など)を各バスに通すことが出発点になる。

リバーブは「部屋」で作った

ZEP初期のリバーブは主にプレートリバーブ(EMT 140)とルーム収録だ。ボーナムのあの巨大なスネアの鳴りは、Headley Grangeというイギリスのカントリーハウスのホールにドラムセットを置いて収録したことで生まれている。

重要なのは、デジタルリバーブはこの時代に存在しないという事実だ。

スクロールできます
リバーブ登場時期ZEP初期への適合
Plate(EMT 140)1957年〜◎ 時代に合う
Chamber/Room収録録音初期から◎ 時代に合う
Lexicon 2241978年〜✕ ZEP初期には存在しない
AIリバーブ(Neoverb等)2020年代✕ 時代感を壊す

「とりあえずNeovrebをかけておく」という現代的な判断は、ZEP風サウンドを一瞬で壊す。プレート+アナログ空間エミュレーションが正解だ。

EQは「削る」より「持ち上げる」文化

当時のコンソールEQ(Helios Type 69、Neve 1073等)は、現代のFabFilter Pro-Q 4のような「精密なカーブ」とは別物だ。ブーストすると倍音が乗り、独特の色づきが生まれる。「まず削って整える」のではなく、ビンテージEQで音楽的に「持ち上げる」ことで質感が出る。

この時代考証が、次のShared Room Bus設計の根拠になる。


【核となる考え方】「同じ部屋で鳴らす」= Shared Room Bus

従来のZEP風DTM解説の多くは、各パートが孤立したプラグイン列挙にとどまっている。ドラムの音が良くても、ベースの音が良くても、「同じ部屋で鳴っている感」がなければバンドサウンドにならない。

ZEPの録音がなぜ一体感を持つかというと、全楽器が同じ部屋(スタジオ)の空気を共有しているからだ。DTMではそれぞれの音が完全に分離したドライ信号から始まるため、意図的に「共通空間」を作る必要がある。

それが Shared Room Bus という設計だ。

Bronze Hammer 全体ルーティング図 Shared Room Bus Master Bus

センド/リターンのよくある誤解

「センド/リターンでリバーブをかける」という使い方は一般的だ。しかし、「被りの再現」と「共通空間アンビエンス」は別物だという点で、多くのDTMerが混乱している。

❌ よくある誤解:

「リバーブをセンドにかければ、同じ部屋感が出る」

✅ 正しい理解:

Room Busの目的は「各楽器が同じ空間の空気を吸っている」という感覚を作ること。各ドライトラックのアタックや音程はそれぞれのトラックが担い、Room Busは「共通の部屋の響き」だけを担当する。

このため、Room Busへのセンドはクリーン(処理前・または軽い処理後)のトラックから行う。コンプで潰した後のCRUSHバスなどは送らない(潰した音は既に部屋鳴り感を含んでいるため、二重になってMudになる)。

Room Busのチェーン構成(検証済み)

【Shared Room Bus チェーン】
① UADx Ocean Way Studios(Studio B)
    Pre-Delay: 20〜30ms
    200Hz以下をカット(低域の濁り防止)

② UADx Studer A800(テープサチュレーション)
    15 IPS / 0VU〜+2VU
    ※リバーブの"後"に通すこと(前に通すと飽和が空間に混入しない)

③ UADx Pultec EQP-1A または FabFilter Pro-Q 4
    音楽的なトーン補正

【センド元】
- Drum MAIN(クリーン)のみ ✅
- Drum CRUSH(コンプ後)→ 送らない ✅
- Bass → 基本送らない(低域死守) ✅
- Guitar → 送る ✅
- Vocal → 送る ✅

【リターン先】
- Wet(Room Busのリターン)は Master Busへ合流(ドライと並列)

なぜサチュレーションはリバーブの「後」か: リバーブの前にサチュレーターを通すと、倍音が加わった状態でリバーブが響く。後に通すことで、「部屋の空気がテープを通った質感」になる。これが時代考証と一致する(レコーディング後にテープを通す工程に相当)。


ドラム(ジョン・ボーナム)

ボーナムのドラムサウンドの本質は3つだ。①巨大なキックとスネアのアタック感、②広大なルーム感(Headley Grange的)、③タイトかつ揺らぎのあるグルーヴ。 プラグインを揃えるより、この3要素を軸に設計する方が早い。

音源:AD2 Blue Oyster(実使用)

使用するドラム音源はAddictive Drums 2のBlue Oysterキット。ボーナムが愛用したLudwigキットをモデルにしており、キックの「太い響き」とスネアの「高いクラッキング音」、広いルーム感が特徴だ。

AD2マルチアウト設定の前提(重要):

AD2をマルチアウトで使う場合、以下の点を把握しておかないと設計が崩れる。

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項目実態
シンバル(OH/HiHat)のパラアウト不可。OHとMASTERにしか出力されない
OHトラックの中身全キット被り込みのアンビ収録
クローズchをミュートしてもスネア・キック・HHの被りは消えない
MASTERステレオミュートする。Cubaseに重ねて取り込まない。X(二重になる)
内蔵Roomチャンネルミュートする。外部リバーブ(Ocean Way)に一本化

AD2あるある(ハマりポイント): 「シンバルをCRUSHに送りたくない → シンバルを抜く方法を探す」という発想になりがちだが、これは誤りだ。CRUSHにクローズK/S/Tomのみを送り、OHはMAINだけに流すという設計にすれば、シンバルはそもそもCRUSHに到達しない。分離処理は不要。

Bronze Hammer ドラム ルーティング図 Shellグループ パラレルコンプ

代替音源(所有外・参考):
Handy Drums JOHN BONHAM STYLE(ボーナム音をそのまま収録)、Spitfire Audio The Grange(Headley Grange的ルーム感)も選択肢だが、いずれも所有外のため設定は各自で確認を。

打ち込み:編集で”人間らしいグルーヴ”を設計する

ボーナムのドラムを打ち込みで再現しようとして、真っ先にやりたくなるのが「完璧なベタ打ち → 後からランダム化」だ。しかし本質は逆で、「演奏スキルではなく、編集スキルで人間らしさを設計する」という発想が重要だ。

5段階の打ち込みメソッド(実践済み):

① 打ち込み(ベロシティは気にせず入力)
② クオンタイズは甘め(60〜80%)。全部ジャストに揃えない
③ ベロシティ自動ランダム化(CubaseのLogical Editor)
④ 強拍(1・3拍のキック/スネア)を手動でブースト
⑤ ゴーストノート:ベロシティ30〜50、タイミングを微妙にズラしてマウス入力

AD2 Blue Oyster のキーマッピング(要注意):

GM標準からズレているため、新しいADpakを使う際は必ず実音で確認してから打ち込むこと。

スクロールできます
パーツGM標準Blue Oyster実際
Open HiHatnote 57note 55(−2半音)
Ridenote 60note 61/62
note 84/86通常は音あり無音(未実装)

この実測はMPD218プリセット「FingerDr.」で検証済み。DAWの鍵盤ロールで音を鳴らして確認する習慣をつけると、「打ち込んだのに音が出ない」という無駄なデバッグ時間を防げる。

ハイハットの判断:
当初はOpen HH(note 55)を使っていたが、ミックスでコンプの余韻が暴れる問題が発生。クローズHH(note 49)に変更することで締まりが改善した。OH被り問題(後述)との整合もとれた。

ミックス:パラレルコンプ実装(MAIN+CRUSH)

ボーナムのドラムの「叩きつける感」は、強いコンプレッションによるパンチ感から来ている。しかしDrum Bus全体に1176を全押しすると、HiHatやシンバルまで潰れて破綻する。 ここで重要なのがパラレルコンプ設計だ。

MAIN+CRUSH の2バス構成:

【MAIN バス】(クリーン)
- クローズK/S/Tom + OH/HiHat すべて通す
- 軽いEQ・テープサチュ程度

【CRUSH バス】(強コンプ)
- クローズK/S/Tom のみ通す(OHは送らない)
- UADx 1176 Rev A(All Buttons In)
    アタック:最速 / リリース:最速
    GR:-10〜-20dB 程度
- CRUSHは Shared Room Busへ送らない

【ブレンド】
- MAIN(クリーン)フェーダーを軸に、
  CRUSHフェーダーで「パンチ感」を足す
- CRUSHは15〜25%程度から試す

「CRUSH → Room Busへ送らない」の理由: 潰した音はすでに部屋鳴り感を含んでいる(コンプが空間感を生成するため)。送ると二重になりMudになる。Shared Room Busへ送るのはMAIN(クリーン)のみが原則。

使用プラグイン:

  • コンプ(CRUSH):UADx 1176 Rev A(所有・実使用)
  • Room:UADx Ocean Way Studios Studio B(所有・実使用)
  • テープ:UADx Studer A800(所有・実使用)
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ベース(ジョン・ポール・ジョーンズ)

ジョーンズのベースは「単なる土台」ではなく、「リズムを設計するメロディック・ベース」だ。Fender Jazz Bass(1961/62年製)の有機的なロー・ミッドと、ACOUSTIC 360アンプの「抜ける低音+軽い歪み感」が基盤にある。

音源と基本設定(実使用)

使用音源:MODO BASS 2(Studio Bass)

【打ち込み設定】
- ベロシティ自動ランダム化
- Aパートはシンコペ控えめ(タイト・堅実に)
- キックとは「完全同期」でなく「補完」設計
  (拍頭で噛み合う、拍裏では独自に動く)
- 💡 メロディックライン(スライド/クロマチック)は展開部で導入検討

【アンプ設定】
- MODO BASS 2 内蔵アンプ+キャビ(実使用)
- 補助:AmpliTube 5(所有)
- ※ Ampeg SVT / Acoustic 360 専用プラグインは非所有。
  実機のキャラクターを「参考」として内蔵アンプで近づける

【コンプ】
- UADx 1176 または LA-2A
- Ratio: 3:1 / Attack: 20ms / Release: 100ms / Gain Makeup: +2〜3dB

【EQ(FabFilter Pro-Q 4)】
- 60〜80Hz:タイトさを死守
- 150〜400Hz(ロー・ミッド):支配的な位置を確保
- 1kHz前後:わずかにブーストして存在感
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低域住み分け(Pro-Q 4 ダイナミックEQ):

ベースとキックの50Hz帯域が常にぶつかると、低域が濁る。これを「常時削る」静的EQで解決しようとすると、キックが鳴っていない瞬間もベースが痩せ続ける。

解決策はダイナミックEQ+キック外部サイドチェーンだ。

Pro-Q 4 → ベーストラックに挿入
→ 50Hz帯をダイナミックEQに設定
→ 外部SC(External Sidechain)にキックを割り当て
→ キックが鳴った瞬間だけ、ベースの50Hzを-3〜5dB 削る
→ キックが鳴っていない間はベースはフルのまま

Room送りをしない理由と例外処理

ベースはShared Room Busへ基本的に送らない。60〜80Hzの低域をRoom Busに送ると、リバーブで低域が広がり、バンド全体のローエンドが濁るからだ。

例外として、「ジョーンズ的な中高域のピッキング感だけ部屋に響かせたい」場合の設定:

センド側で 250Hz以下をHPF(ハイパスフィルター)でカット
→ 中高域(ピッキングのアタック感)のみをRoom Busへ
→ センド量はドラムの1/10程度(Drum:Bass = 10:1〜2)
ベース サイドチェーンEQ キック 住み分け ルーティング図

ギター(ジミー・ペイジ)

ペイジのギタートーンの核は「上手く弾く」ではなく「危うさ・荒削り」だ。ジャストに置かない、わずかに走る・モタる、クリーンではなくクランチ〜ナチュラルな歪み。これがLed Zeppelinのグルーヴ感の正体だ。

音源:Ample Guitar LP 4(所有・実使用)

レスポール系の定番音源。バッキング・リードともBronze Hammerで実使用。

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打ち込み:Haasダブルトラックとペイジ的ルーズさ

バッキングギターの広げ方(Haas的ダブルトラック):

① バッキングGtトラック(L)を打ち込み
② そのトラックをコピー(R用)
③ RトラックにTrack Delay +7ms を設定
④ L: パン L70〜73 / R: パン R73 に振る

これだけでステレオの広がりが出る。手間が少なく、確実に効く。

モノ互換の注意: 配信はステレオなので実用上の問題はないが、気になる場合はCubaseのモノボタンで確認推奨。7msのコムフィルターが発生する場合は位相を調整する。

リードギターの収録(5テイク コンピング):

① 60BPMで録音(複雑フレーズは半速録音)→ 120BPMで確認
② Cubaseのレーン録音で5テイク取る
③ レーンコンピングで最良フレーズを選択
④ 「MIDI → MIDIパートのバウンス」で統合
   ※ Cubase Pro 15の正式名称。「Merge Comp」等は他DAWの用語
⑤ ピッチベンドはバウンス"後"に追加
   (録音中に入れると全レーンに同時適用されるため)

ピッチベンドの設定(±2半音固定):

スクロールできます
音程カーブ位置
全音(2半音)頂点 100%
半音50%
クォーター25%
カーブ形状下凸の放物線

💡 ペイジ感の上乗せ10技法(提案・未実装):

以下は技法の方向性として有効だが、Bronze Hammerでは未検証。参考として記載する。

  1. ルーズなタイミング(±10〜30ms)
  2. 広く遅いビブラート(CC#1)
  3. ベンド+頂点ビブラート
  4. クォータートーン
  5. プルオフ連符
  6. ダブルストップ
  7. ペンタ下降ラン
  8. リピートモチーフ
  9. ダイナミックピッキング(vel 60→110)
  10. プリベンド&リリース

中域マスキング:Pro-Q 4 ダイナミックEQ

バッキングギターとスネアは800Hz〜2kHz帯域が重なりやすい。両方がフルで鳴ると「詰まった中域」になり、70年代ロックの抜け感が出ない。

解決策:スネアSCのダイナミックEQ(実践済み):

Pro-Q 4 → バッキングGtバスに挿入
→ 800Hz〜2kHz をダイナミックEQに設定
→ 外部SC(External Sidechain)にスネアを割り当て
→ スネアが鳴った瞬間だけギターの中域を-2〜3dB 凹ます
→ スネアが鳴っていない間はギターはフルのまま

補完EQ(UADx Helios Type 69):

UAD (Universal Audio)
→ バッキングGtバスに Helios Type 69 を追加
→ 1k〜2kHzをわずかにブースト(音楽的な倍音で中域を強調)
→ Shared Room Bus側EQで-1〜-2dB を「譲る」
→ ギターとスネアがパズルのピースとして噛み合う

その他ギター処理:

- HPF: 100〜120Hz(低域カット)
- 8〜10kHzをロールオフ(高域の耳障り感を取る)
- L/Rハードパン(バッキングはL/Rに完全分離)
- リードギター:L/R 100%(センター)

ギターテープエコー:
Pulsar Echorec(所有・実使用)。

ギター 中域マスキング Haasダブルトラック ルーティング図

ボーカル(ロバート・プラント)

Bronze Hammerはインスト曲のため、ボーカル処理は実例がない。ここはZEP初期の時代考証+一般的なアプローチとして記載する。

プラントのボーカルの特徴:
ブルース由来のシャウト(スクリーム)とファルセットを混ぜた広いレンジの発声。腹圧を強くかけて頭声域に抜くことで独特のハイトーンが出る。単に叫ぶのではなく「押し引き」を意識したダイナミックな歌唱が重要。

マイク(時代考証):
1969〜1973年の録音ではShure SM58・SM57等のダイナミックマイクをアンプ近く〜中距離配置で使っていた。近接効果を意識し、ボーカル録音にEQで中高域(3〜6kHz)を持ち上げると「Live感」が出る。

エフェクト設定:

【コンプ】
アタック遅め・リリース短め
→ 瞬発的な声の抜けを維持しながら中域の厚みを残す

【EQ】
- 200Hz以下を軽くカット
- 3〜6kHz をブースト(プラント的ハイトーン)
- 7〜8kHz に少しエア感を追加

【リバーブ(時代考証準拠)】
Abbey Road Reverb Plates(所有・実使用)
→ Decay: 1.8〜2.5秒
→ Pre-Delay: 30ms
→ 「Zeppelinスタジオ感」を再現
※ AIリバーブ(Neoverb)・デジタルリバーブ(Lexicon系)は時代が合わないため不使用

【ディレイ】
短めのスラップバック(120ms前後)を少量
→ ZEP初期風の空気感

【サチュレーション】
クリーン録音後に軽い倍音歪みを追加
→ 実機の温かさを模倣

💡 ACE Studioでの応用:
ボーカルトラックをリアルに歌える環境がない場合、ACE Studioを使ったAIボーカル合成で試作する方法もある。クーポンコード 5OFFACE で割引あり。ただし時代感を出すには上記のアナログ系エフェクト処理が必要になる。


マスタリング(iZotope Ozone 11 Advanced)

Bronze Hammerでの実測値(確定):

Integrated LUFS: -7.2
True Peak: -2.51dB

この数値に至るまでの判断プロセスを共有する。

Ozone 11でZEP初期感を守るための鉄則

❌ やりがちな失敗:ClarityとStabilizerを積極的に使う

Ozone 11のAIアシスタント(Clarity/Stabilizer)は、現代的な「クリアでバランスの良いサウンド」を目指す。ZEP初期の「荒削りで温かみのある70年代感」は、これと真逆だ。

Clarity: オフ〜10%以下(積極的に使わない)
Stabilizer: Cut モードのみ(Boostは使わない)

✅ Maximizerの設定(実践済み):

アルゴリズム: IRC IV Classic
(Punchより70年代の温かさが出る)
Upward Compress: +1.6dB
Transient Emphasis: 23%
Character: 1.18(遅め)
→ リミッターがアタックを即座に叩かないようにする

スネアのアタックを潰さない工夫が肝:
Transient Emphasisでアタックを持ち上げ、CharacterをややSlowにすることでリミッターの反応を遅らせる。Deltaモードで「スネアが削られていないこと」を確認すること。

✅ Impact(Maximizer直前):

キック(0〜100Hz): アタック +2.0
スネア(1k〜2.5kHz): アタック +1.5
サスティン: いじらない

✅ Vintage Limiter(Tube):
各バスでStuderを通しているため、マスター段のサチュレーションは控えめに。Vintage Limiter Tubeを薄く一塗りする程度。

Output Level:-1.0dB / True Peak ON(配信クリップ防止)

LUFS目標値の考え方

Spotify ノーマライズ: -14 LUFS
→ -14LUFSに合わせると「静かに聴こえる」感覚になることがある
→ ハードロックは密度感が命。-10〜-8 LUFS程度が実用的

Bronze Hammer実測: -7.2 LUFS(当初目安-9より高密度)
→ ジャンルと耳で最終決定するのが正解
→ 「LUFS目標は絶対ではない。音楽的な密度感を優先する」という学びも記事の価値

実例:Bronze Hammer

本記事の手法(Shared Room Bus+パラレルコンプ+中域マスキング+Ozoneマスタリング)で実際に仕上げたハードロック・インスト曲。

▶ Bronze Hammer(32秒・サビ×2)

本記事の手法(Shared Room Bus+パラレルコンプ+Ozoneマスタリング)で実際に仕上げたインスト曲。
-7.2 LUFSの密度とタイトな低域を両立

第三者評価(AI音声解析):
AI音声解析(Gemini)による聴感評価で、以下の評価を得た。

  • 「配信プラットフォームへ納品可能な商業レベルの完成度」
  • 「スネアのアタックは潰れず生きている」
  • 「低域はタイトで濁りなし」
  • 「リードは金物と分離して抜けている」

※ 評価主体はAI解析であることを明記した上で、実際に作り・客観評価も通したという事実として紹介する。

制作の試行錯誤(やりがちな失敗として):

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試したこと結果
Drum Bus全体に1176全押しHiHat等に効きすぎ破綻。個別処理へ転換
キック「Drum Squash」プリセット潰しすぎで低域がうなる
ベースへのStuder中低域ドライブ変化少なく不採用
リードへのM/S処理リードはモノtrでSide成分なし・不採用

1ヶ月後の再リライト予定:
各パートの打ち込み・エフェクト設定の解説動画をアップロード後、本記事に追加予定。


まとめ

本記事の核心は「プラグインを揃えること」ではなく、「1969〜1973年の録音技術を理解し、DTMで同等の仕組みを設計すること」だ。

本記事の要点:

  • 時代考証を理解する: ZEP初期はテープ+Plate/Chamber。Lexicon・AIリバーブは時代が違う
  • Shared Room Busを設計する: 全パートが「同じ部屋の空気を共有」する仕組みを作る
  • ドラムはパラレルコンプ: MAIN(クリーン)+CRUSH(1176 All Buttons In)のブレンド
  • ベースは低域を死守: Room送りは基本しない。するなら250Hz HPFで中高域のみ
  • ギターは中域マスキング: Pro-Q 4 ダイナミックEQ+スネアSCでペイジの「抜け」を作る
  • マスタリングは70年代感を守る: ClarityとStabilizerは控えめに。IRC IV ClassicとTransient Emphasisで密度と温かさを両立

このノウハウはあくまで「実践から導いた設計思想」だ。最終的にはご自身の環境と耳を頼りに、調整を重ねて「あなたのレッド・ツェッペリン」を創り上げてほしい。


よくある質問(FAQ)

Shared Room Busには何を送ればいいですか?

クリーン(処理前または軽処理後)のトラックから送ります。コンプで強く潰したバス(CRUSHなど)や、ベースの低域成分は送りません。送った音が部屋で響いた結果が、全パートに共通するアンビエンスになります。

AD2以外のドラム音源でも同じ設計は使えますか?

パラレルコンプ(MAIN+CRUSH)の設計はどのドラム音源でも使えます。ただしAD2マルチアウト特有の「OH被り込み」問題は音源によって異なるため、マルチアウト設定は各音源の仕様を確認してください。

LUFS -7.2は高くないですか?Spotifyに上げて大丈夫ですか?

Spotifyは-14 LUFSにノーマライズするため、-7.2 LUFSでアップロードしても音量は下げられます。ただしダイナミクスの「密度感」は保たれます。ハードロックとして音の圧を優先した結果がこの数値で、本人判断でOKとしています。LUFS目標はジャンルと耳で最終決定するのが正解です。

ボーカルがいない場合(インスト)でも本記事の手法は使えますか?

はい。Bronze Hammer自体がインスト曲で、本記事の手法で仕上げています。ボーカルチャプターは参考として残していますが、インスト制作ではスキップしても問題ありません。


次の記事も、きっとあなたのお役に立ちます。気になる方はこちらからチェック!

音源プラグイン



最後まで読んでいただきありがとうございました。

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