ストリングスのボイシングの基本

ストリングスのボイシングの基本
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筆者は1970年代で使用されたメロトロンや1980年代に活躍したアナログシンセサイザーのストリングスなどをシミュレートしたソフトシンセサウンドを楽曲に取り入れてます。

なぜストリングスのボイシングを調べるようになったのか

STRINGS

ストリングスのボイシングについて調べ始めた理由は、DTMで作曲を行う中で、どうしても楽曲に「厚み」や「深み」を持たせることができず、アレンジに悩んでいたからです。

特に、複数のトラックを重ねているにもかかわらず、音が「濁る」か「薄っぺらく」なってしまう問題に直面していました。メインメロディは良いとしても、背景となるストリングスやパッドの役割を適切に処理できていないことが原因だと感じていたのです。

また、プロフェッショナルの楽曲を参考にした際、同じような構成のはずなのに、サウンド全体がまとまり良く、かつダイナミックに感じられることに疑問を抱きました。「何が違うのか?」と自分の作ったトラックと聴き比べた結果、ストリングスのボイシングに課題があることに気づき、深く学ぶことにしました。

その後、いくつかの教材や参考書を調べながら、自分の楽曲にボイシングの理論を取り入れて試行錯誤を重ね、徐々にその効果を実感するようになりました。

基本的なボイシングの考え方はフルハーモニー

ストリングスのアレンジでは、全ての和音(メジャー、マイナー、7thなど)に対して必要な音を完全に埋めるようにします。これにより、リッチで豊かな響きを得られます。4声ハーモニーの場合、ヴァイオリンI、ヴァイオリンII、ヴィオラ、チェロの順に高音から低音まで配置します。シンセサイザーを使用する場合でも、同じボイシングテクニックを活用することで、よりリアルで豊かなストリングスサウンドを再現することが可能です。

以下ではオクターブ番号または国際式音名(C0~C4~C8)を使って説明します。

Divisi(ディヴィジ)

Aマイナーのディヴィジをキードードで表現
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ストリングスセクションを複数のパートに分ける分割演奏「ディヴィジ」は、より豊かでフルなサウンドを作り出すための重要なテクニックです。例えば、ヴァイオリンIIをアルトとテナーに分け、ヴィオラをフィラー(中間の和音を埋めるパート)として使用することで、全体のハーモニーを厚くします​。たとえば、ヴァイオリンIパートを「C」と「E」に分割し、よりリッチなハーモニーを作ることができます。例として、Aマイナーコードのディヴィジ:

Aマイナー:

  • 1st Violins (Divisi): C4 (3rd) & E4 (5th)
  • 2nd Violins: A4 (root)
  • Violas: E3 (5th)
  • Cellos: A2 (root)

最初にAmコードをフルボイシング、そのあとでディヴィジをストリングスシンセで弾いてます。

この場合、1st Violinsのパートが「C4」と「E4」に分割され、2つの音を同時に演奏します。ディヴィジを使用することで、各パートが複数の音を担当し、和音の厚みが増します。また、2nd ViolinsViolasがそれぞれルートと5thを担当し、チェロが最低音でルート音を支える形です。

ディヴィジによるボイシングは、厚みを持たせながら、音同士が干渉しないクリアな響きを作り出します​。

オープンとクローズドボイシング

クローズドボイシング (Closed Voicing)

Cメジャーのクローズドボイシングをキードードで表現
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クローズドボイシングでは、和音の構成音をできるだけ近くに配置します。たとえば、Cメジャーコードの場合、次のように音を密集させて配置します。

Cメジャー (クローズドボイシング):

  • 1st Violins: G4 (5th)
  • 2nd Violins: E4 (3rd)
  • Violas: C4 (root)
  • Cellos: C3 (root, オクターブ下)

最初にCコードをフルボイシング、そのあとでクローズドボイシングをストリングスシンセで弾いてます。

このように、音を密集させることで、特に高音域ではクリアで安定した響きを得ることができます。これは、和音をコンパクトに配置するため、密度の高いサウンドが生まれるのが特徴です​。

オープンボイシング (Open Voicing)

Cメジャーのオープンボイシングをキードードで表現
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一方、オープンボイシングは、各音を広げて配置し、より広がりのあるサウンドを作ります。音域を広く活用することで、サウンドに深みと広がりを与えることができます。

Cメジャー (オープンボイシング):

  • 1st Violins: E5 (3rd, 高音域)
  • 2nd Violins: G4 (5th, 中音域)
  • Violas: C4 (root, 中音域)
  • Cellos: C2 (root, 低音域)

最初にCコードをフルボイシング、そのあとでオープンボイシングをストリングスシンセで弾いてます。

オープンボイシングは、特に低音域での重厚感や、各パートがはっきりと区別されるサウンドを作り出します​。

このように、クローズドボイシングでは音が近くに配置されて密集した響きが得られ、オープンボイシングでは音を広げることで深みと広がりが強調されるのが特徴です。

ドロップ2ボイシング (Drop 2 Voicing)

ジャズやモダンな編曲で使われる「ドロップ2ボイシング」は、2番目に高い音を1オクターブ下げるテクニックです。

例えば、Cメジャー7のドロップ2ボイシングについて説明します。

クローズドボイシング (Closed Voicing)

Cメジャー7thのクローズドボイシングをキードードで表現
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Cメジャー7th (クローズトボイシング)

  • 1st Violins: B3 (7th)
  • 2nd Violins: G3 (5th)
  • Violas: E3 (3rd)
  • Cellos: C3 (root)

この配置では、和音の各音が互いに近接しており、密集した響きを持ちます。

ドロップ2ボイシング (Drop 2 Voicing) への変換

Cメジャー7thのドロップ2ボイシングをキードードで表現
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ドロップ2では、2番目に高い音(2nd ViolinsのG)を1オクターブ下げます。これにより、和音に広がりが生まれ、より豊かな響きを持つボイシングとなります。

Cメジャー7th (ドロップ2ボイシング)

  • 1st Violins: B3 (7th)
  • 2nd Violins: G2 (5th) → 1オクターブ下げてG
  • Violas: E3 (3rd)
  • Cellos: C3 (root)

2番目に高い音をオクターブ下げる理由

ドロップ2ボイシングで2番目に高い音をオクターブ下げる理由には、音響的なバランスと和音の広がりに関する重要なポイントが含まれています。

1. 音のバランス

ドロップ2ボイシングでは、2番目に高い音を下げることで、音の配置にバランスが生まれます。最も高い音をそのまま残すことで、メロディの役割を維持しつつ、他の音をオクターブ下に配置してサウンドに広がりを持たせることができます。もし最も高い音を下げてしまうと、メロディの明瞭さが失われ、サウンド全体がぼやける可能性があるため、2番目に高い音を下げるのが一般的です​。

2. 和音の広がり

ドロップ2ボイシングは、クローズドポジションで密集している音を広げ、和音全体の響きを豊かにします。2番目に高い音を下げると、各音が程よく離れて配置され、オープンボイシングの効果が得られます。これにより、低音から高音までの音域が均等にカバーされ、深みのあるハーモニーが実現します​。

3. 低音域での干渉を避ける

もし1番高い音や3番目、4番目の音を下げてしまうと、特に低音域で音同士が過度に近づくことになり、和音が濁って聞こえることがあります。2番目の音を下げることで、音同士の距離が適度に保たれ、クリアで響きの良いサウンドが得られます。

ドロップ2ボイシングは、サウンドバランスを保ちながら和音の広がりを確保するために、2番目に高い音をオクターブ下げる方法が選ばれています。このテクニックにより、メロディの明瞭さを維持しつつ、和音全体の響きに深みと透明感を加えることができます。

テンションの使用

jazz

テンション(9th, 11th, 13th)を加えることで、ジャズやポップスのストリングスアレンジに色彩を加えることができます。たとえば、C add9thコード

Cadd9thをキードードで表現
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C add9th(テンション追加)

  • 1st Violins: D (9th)
  • 2nd Violins: E (3rd)
  • Violas: G (5th)
  • Cellos: C (root)

これにより、よりモダンでジャジーな響きを得られます​。

ストリングスボイシングを学んでDTM作曲が飛躍的に向上した理由

筆者はストリングスのボイシングに対する理解が深まり、それが直接的にDTM作曲のアレンジに大きな影響を与えました。以下にその効果をまとめます。

1. サウンドに奥行きと広がりが生まれた

ストリングスは楽曲において重要な役割を果たしますが、適切なボイシングがなければ平坦なサウンドになってしまいます。ボイシングを学んだことで、各パートが互いに干渉せず、かつ効果的に広がりを持つようになり、全体のサウンドがリッチに感じられるようになりました。

2. バランスの取れたアレンジが可能になった

DTMでのアレンジにおいて、ストリングスの配置や役割がクリアになり、メインメロディを引き立てるためのバッキングとして機能させやすくなりました。特に高音域と低音域のバランスを保ちながら中音域を効果的に埋める方法を学べたことで、楽曲全体のまとまりが良くなりました。

3. 楽曲の雰囲気を自在にコントロールできるようになった

ストリングスのボイシングによって、楽曲の雰囲気や感情をより細かくコントロールできるようになりました。例えば、シンプルな3度の重ね方や、開いたボイシングを用いることで、楽曲の静かな部分や盛り上がりを効果的に演出できるようになりました。

4. 作業時間の短縮

以前はアレンジに悩む時間が長く、試行錯誤を繰り返していましたが、ボイシングの理論を理解したことで、直感的にアレンジが組み立てられるようになり、作業時間を大幅に短縮できました。

まとめ

このように、ストリングスのボイシングを学ぶことで、作曲のスキルが飛躍的に向上しました。特にアレンジメントの面で、より洗練されたサウンドを生み出すことが可能となり、作業効率も上がっています。これからもこの知識を活かして、さらに魅力的な楽曲制作に取り組んでいきたいと思います。

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